1-2
「お帰りなさいませー。」
…これは、お客さんが私にいだくイメージとは違うかも知れないけど。
「…あんたなら、うちでタダでさせてあげるのに。」
少なくとも、私には、恋人がいる。
2.
店を出ると、騒々しいネオンは消えていた。空を見上げると、あの街の明かりも消えていた。朝日が昇るまでのわずかな間、この街は、ほんの少しだけ眠る。街が眠っている間に私は家に帰る。道は薄暗く、道端に転がっている人が、酔っ払いなのか、死体なのか、よく分からない。いっそ、死んでてくれる方が安心だけど。怖いなぁ。心細いなぁ。なんて言ったりして。
「ありがとね。」
「もうちょっと最後の方にしたら良かったかな。順番。」
「何してたの?」
「家でぼーっとしてたよ。寝てた。」
「ふーん。どっち?」
いつもは、迎えにきたりしないのだけど、わざわざ客として、お店にきてみたり。こういう時は、きっと何かあるに違いない。
「私、結婚とかしないからね。」
「ええ!?」
先手必勝に限る。前々から、こいつは、ツグは、何かと結婚とか、そんな話をしてくるヤツなんだ。だから、もう、おんなじ話と、おんなじ口ゲンカは、したくない。