肉屋の店員さんのツグに勝てる訳ない 6.

 6.

 私は、持ち回りの当番制で、指名をもらって、それを受けたら即オーケーだった。こんなに楽しているのは私だけ。ツグが出る『ira』は、選抜にエンターテイメント性を持たせていた。その内容は、すごくシンプルに「【省略】大会」です。【省略】の上手さを競い合う内容。全員で一斉に【省略】、生き残った人が優勝。ツグが話してくれなかったから、内容を知らなかった。128人の【省略】が参加していて、ツグもその中の一人。ポリスとか、アーミーとか、【省略】のプロもいて…単なる肉屋の店員さんのツグに勝てる訳ない。


 「どうしてツグは話してくれなかったんだろう?」


 そう思うと胸がキュンとなった。ツグのことは好きだった。だから、毎日のように一緒に寝ていたし、どんどんマニアックになる、【省略】もゆるせた。「好きだから」が全てだと思っていたけど…そんなのは、飛び越えた感情が襲ってくる。好きな人が死ぬかも知れない、できれば、こんな感情とは無縁でいたかった。手が震えている。「ツグが死んだら私も死のう」、そう考えたら、手の震えは止まったように思えたけど、抑えている手も、身体も一緒になって震えているのかも知れない。

 気持ちが裏返ってしまったのか、テレビで行われる【省略】ゲームは、娯楽番組の一つに思えた。

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